技能実習制度
日本の技能実習制度は、主に開発途上国の人々に日本の技術、技能、知識を習得させることを目的としています。この制度は、日本の産業における技能不足を補う目的も兼ねています。以下はその主な特徴です:
1.目的:
- 技能実習生に日本の技術や知識を習得させ、その後母国での経済発展に貢献させること。
2.期間:
- 技能実習1号は最大1年、技能実習2号はさらに2年間(合計3年)、特定の条件を満たせば技能実習3号としてさらに2年間(合計5年)の実習が可能です。
3.業種:
- 農業、建設、製造業、食品製造業、介護など、複数の業種が対象となっています。
4.制限と保護:
- 技能実習生は特定の業務にのみ従事可能であり、労働者としての権利が保護されています。
特定技能制度
特定技能制度は、2019年に導入された比較的新しい制度で、特定の業種における労働力不足を解消することを目的としています。以下はその主な特徴です:
1.目的:
- 日本の産業における人手不足を補うため、特定の分野での労働を行うための外国人労働者の受け入れ。
2.期間:
- 特定技能1号は最大5年間の在留が可能です。特定技能2号はさらに長期間の在留が可能で、家族の同伴も認められています(ただし、介護分野では2号は設定されていません)。
3.対象分野:
- 介護、建設、農業、飲食業、宿泊業など14の指定された分野。
4.要件:
- 日本語能力および専門的な技能や知識が求められます。技能実習を終了した人は、一定の条件下で特定技能へ移行することが可能です。
これらの制度は、日本での人手不足を解消し、同時に外国人労働者に技術や知識を提供するという二重の目的を持っています。
特定技能制度は、外国人労働者がより長期間にわたり日本で働くことを可能にし、一定の技能や日本語能力を持つことで、即戦力として期待されています。
技能実習生から特定技能への移行は、日本における外国人労働者の受け入れ体制の重要な部分です。ここでは、そのプロセスについて詳しく説明します。
技能実習生から特定技能への移行プロセス
- 技能実習終了: 技能実習生は通常、最大3年間(一部の職種では5年間)の技能実習を経験します。
- 特定技能資格の要件: 技能実習を終了した後、特定技能への移行を希望する場合、関連する特定技能の資格要件を満たす必要があります。これには、日本語能力試験および専門的技能試験の合格が含まれる場合があります。
- 特定技能試験の受験: 特定技能への移行には、関連する分野の特定技能試験に合格することが必要です。技能実習を終了した人は、実習中に習得した技能や経験を活かして試験に挑むことができます。
- 雇用契約の締結: 特定技能試験に合格した後、技能実習生は日本の企業との雇用契約を締結することが求められます。この契約は、特定技能ビザの発給に必要です。
- 特定技能ビザの申請: 雇用契約が締結された後、技能実習生は特定技能ビザの申請を行います。これには、雇用契約書、試験の合格証明書などの書類が必要になります。
- 在留資格の変更: 特定技能ビザが承認された後、技能実習生は在留資格を「技能実習」から「特定技能」に変更します。
補足
- 日本語能力: 特定技能への移行には、一定レベルの日本語能力が要求されます。これは、職場での円滑なコミュニケーションや日常生活での適応を目的としています。
- 法規制の遵守: 日本の法律や規則に従うことが重要です。不正な手段での在留資格の変更は避けるべきです。
- 支援体制: 技能実習生から特定技能への移行をサポートするための相談窓口や支援機関の利用が推奨されます。
介護施設が外国人労働者を雇用する際には、いくつかの重要な法的な注意点があります。
- 在留資格の手続き: 外国人労働者を雇用する前に、彼らの在留資格を確認し、必要に応じて在留資格の変更や更新手続きを行う必要があります。在留期日の1か月前までに出入国在留管理局への書類提出が必要です。
- コミュニケーションとサポート: 言語の壁や文化の違いを考慮し、適切なコミュニケーション手法の確立とサポート体制の構築が必要です。例えば、言葉だけでなく写真付きのマニュアルを用いることで、指示がより明確に伝わります。
- 申請や届出の管理: 外国人労働者を雇用する際には、各種申請や届出を適切に行い、労働管理の知識も必要です。例えば、在留資格の管理や更新の支援、必要に応じて外国人労働者雇用管理責任者の選任も考慮する必要があります。
介護施設が外国人労働者を雇用する際には、これらの点に留意し、適切な準備とサポート体制を整えることが求められます。
介護ビザを持つ外国人労働者の採用にはいくつかのメリットがあります。以下にその主なポイントをまとめました。
1.在留期間の柔軟性: 介護ビザは在留期間や資格更新回数に制限がなく、本人が望む限り、在留資格の更新を行いながら永続的に働くことが可能です。
2.永住の可能性: 5年以上介護ビザで働き、かつ10年以上日本で過ごした場合、永住権を取得することが可能です。これにより、就労制限がなくなり、介護以外の職に就くことも可能になります。
3.国籍の制限なし: 介護ビザは対象国の制限がないため、国籍に関係なく雇用が可能です。これにより、より幅広い人材からの採用が実現します。
4.業務制限のない就労: EPAや技能実習など他の在留資格と比べて業務制限がないため、訪問系サービスの事業所でも人材が確保でき、幅広い業務に従事させることができます。
5.専門性: 介護ビザを持つ外国人は、介護福祉士の資格を取得しており、介護に関する専門的な知識とスキルを持っているため、即戦力として期待できます。
ただし、いくつかのデメリットもあります。介護ビザを持つ外国人労働者を採用する際には、雇用マッチングを行う専門機関がないため、介護事業者が自ら養成校に働きかけたり、紹介会社を利用する必要があります。また、外国籍の介護福祉士の合格者が少なく、結果として介護ビザを持っている人材も少ないため、採用が難しいこともあります。
介護業界における深刻な人材不足を考慮すると、これらのメリットは非常に重要です。介護ビザを持つ外国人労働者を採用することで、介護サービスの質の維持や向上に貢献することが期待されます。
介護施設での外国人労働者の事例には、さまざまな背景を持つ人々がいます。例えば、フィリピン出身のヤンバオ・ローランドさんは、元々看護師として働いていましたが、日本ではその資格が使えないため、介護福祉士の資格取得を目指しています。彼は、人をケアすることが好きで、利用者を自分の家族のように思って働いています。
また、中国・河南省出身の楊・家勇さんは、留学ビザで来日し、大学院で歴史を学んだ後に介護施設で働き始めました。彼は、ロボットリハビリのフロアを任され、管理職として働きながら、在宅復帰や社会復帰を目指す人々のサポートをしています。
また、介護施設での外国人労働者の受け入れには様々な事例があります。
社会福祉法人晋栄福祉会では、フィリピン人の介護福祉候補生を受け入れ、当初は日本語や文化の違いによる不安があったものの、時間をかけてスタッフ間の理解が深まり、より良い雰囲気の職場環境を築いています。
また、介護老人保健施設ラ・パスでは、受け入れてから3年かけて、日本人職員と外国人職員がお互いに理解し合い、良好な職場環境を作り上げています。
外国人採用の成功には、言語能力や文化の違いへの理解、そして職場での適切なサポートが重要です。これらの事例からは、外国人労働者と日本人職員が互いに理解し合い、お互いの価値観を尊重することが成功の鍵であることが見て取れます。また、外国人労働者が介護現場で積極的に活躍し、日本人職員の意識も高まっていることが分かります。
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