EPA介護人材とは何か?制度背景と他制度との違い

介護のキャリアアップ

日本の介護現場で活躍する外国人材にはいくつかの受入れ制度があります。その中でもEPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者受入れ制度は、他制度に比べて人材の質が高く、事業者に多くのメリットをもたらす注目の制度です。

本記事では、EPA介護人材の制度概要や導入背景、技能実習特定技能との違い、日本語力や専門性の高さ、そして介護事業者にとっての優位性について詳しく解説します。公式データや公的機関の情報も引用しながら、EPA人材の特徴と活用メリットを整理します。

EPA介護人材受入れ制度の概要と背景

EPA介護福祉士候補者受入れ制度とは、日本が他国との経済連携協定(Economic Partnership Agreement)に基づいて実施している介護人材受入れ制度です。

現在この制度の対象となっているのはインドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国で、各国との二国間協定に基づき毎年介護福祉士候補者を受け入れています。例えば、インドネシアとは2008年、フィリピンとは2009年、ベトナムとは2014年から受入れを開始し、2019年までに累計6,400名以上の候補者が来日しました。

最新では累計8,809名(インドネシア3,781名、フィリピン3,304名、ベトナム1,724名)のEPA介護福祉士候補者が日本で研修・就労しています

この制度は、本来「看護・介護分野の人材不足対策」としてではなく、相手国からの要望に応えて経済連携を強化する目的で導入された経緯があります。しかし実際には、深刻な介護人材不足に直面する日本の現場で即戦力となる外国人材を確保するルートとして機能しており、多くの介護施設がEPA候補者の受入れを人手不足解消策の一つと位置付けているのが現状です。EPAは政府間の正式な枠組みであるため信頼性が高く、受入プロセスも民間あっせん業者経由ではなく**JICWELS(国際厚生事業団)**という公的機関がマッチングを行います。このように国主導の安心感がある点も、EPA人材受入れ制度の大きな特徴です。 

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EPA介護福祉士候補者は在留資格「特定活動」により最長4年間の滞在が認められ、その間介護施設等で働きながら日本の介護福祉士国家試験の合格を目指します(看護師候補者は最長3年)。

候補者は受入施設と雇用契約を結んで就労し、日本人と同等以上の給与が支払われるほか、労働基準法や社会保険も適用されるため、待遇面では日本人職員と同様に保護されています。入国前に送出国で6~12か月間の日本語研修を受けてから来日し、来日後も6か月程度の日本語研修(ベトナムは約2か月の研修)を経て、介護施設での業務に就きます。

インドネシア・フィリピン候補者はJLPT(日本語能力試験)N4相当の力を付けてから入国し、研修修了時にはN3程度に達する計画です(ベトナム候補者はN3合格者のみ参加し、入国時からN3以上)。このようにマッチングから実際の就労開始まで約1年の準備期間を要しますが、その間に言語や介護知識をしっかり習得できるため、受入れ後はスムーズに業務に入ることができます。

EPA人材の高い資質:教育水準・日本語力・国家試験合格率

EPA介護人材の大きな特徴の一つが、その教育レベルの高さです。

応募条件として「母国で看護系の学校を卒業」しているか、または「母国で介護士として正式に認定されていること」が求められており、実際に来日する候補者の多くは看護大学卒業など高い学歴を持つエリート層です。

例えばインドネシア人候補者は看護学校や保健大学の卒業生が中心であり、フィリピン・ベトナムも看護学部卒や国家資格保有者が選抜されています。そのため医学・介護の基礎知識が豊富で、専門用語の理解や介護技術の習得も早い傾向にあります。 

日本語能力の面でも、EPA候補者は他制度の外国人より高い水準にあります。前述のように来日前後に長期の語学研修を受けるため、現場配属時には少なくともN3程度の日本語力を備えています。受入れ施設や関係機関による継続的な指導により、働きながら日本語力を伸ばして多くの候補者が最終的にN2レベルに到達するケースも珍しくありません。

実際にEPA候補者を多数受け入れている社会福祉法人の事例でも、「勤務開始時点でほとんどの候補者が日本語能力試験N2を取得している」と報告されています。日本語による利用者とのコミュニケーションや記録業務も概ねこなせるため、現場での即戦力性に直結しています。 

最大の目的である国家試験の合格率も、年々向上しています。介護福祉士国家試験は日本人でも合格率およそ7割前後(令和5年の第35回試験で全受験者の合格率82.8%)と決して易しくはない試験ですが、EPA候補者も努力を重ねて高い合格実績を上げています。

厚生労働省の公表データによると、令和5年(2023年)の第35回介護福祉士国家試験ではEPA候補者全体の合格率65.4%に達しました。中でもベトナム人候補者は96.1%という驚異的な合格率を記録しており、他国候補者を含めてもEPA経由の外国人受験者の過半数が国家資格を取得できている状況です。

この背景には、試験対策のための用語の見直し(難しい漢字にふりがな付与等)や受験時間延長など政府の支援策もありますが、何より候補者自身の高い目的意識と努力が大きいでしょう。「一人でも多く母国から送り出し、日本の国家資格を取得して欲しい」という期待を背負って来日しているだけに、学習意欲は非常に旺盛です。現場の日本人職員から見ても、EPA候補者は専門知識の習得意欲が高く勤勉であると評価されています。実際に病院や介護施設でも「日本人と遜色ない専門能力と日本語運用力で熱心に業務に当たっている」と賞賛の声が上がっています。 

source:kenshokai.group tricruise.id en.vietnamplus.vn

こうした結果、EPA候補者の多くが資格取得に成功し、正規の介護福祉士として日本で長期就労する道を開いています。厚生労働省も「できるだけ多くのEPA候補者が国家試験に合格し、その後も継続して日本に滞在・就労すること」を期待していると述べており、優秀な外国人材の定着という観点からもEPA制度は大きな成果を上げつつあります。

技能実習・特定技能との違い:制度比較と人材面の差異

EPA介護人材制度を理解するには、技能実習特定技能とどう違うのかを押さえておくことが重要です。これら3つの制度はいずれも外国人が日本の介護現場で働く仕組みですが、制度趣旨や対象者、在留条件などに明確な違いがあります。以下に主な違いを整理します。

  • 制度の目的・対象国:技能実習制度は「日本の技術・技能を途上国の人材育成に役立てる国際貢献」が目的で、人材不足解消策ではない建前があります。一方、特定技能制度は介護分野の人材不足を補うために2019年に創設された制度で、明確に労働力確保を目的としています。EPA制度は前述の通り経済連携協定の一環であり、対象国はインドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国に限定されています。特定技能は国籍制限がなく世界中から応募可能、技能実習も送り出し国の認定はありますが多くの国に門戸が開かれています。それに対しEPAは政府間で定めた国とのみ行われるため限定的です。
  • 受入れ手続きの流れ:技能実習と特定技能では、受入企業・施設が民間の送出機関・人材紹介会社等を通じて人材を採用できます。特定技能1号(介護分野)の場合、海外・国内で試験合格した人を直接雇用契約する形で比較的スピーディーに採用可能です。これに対しEPAの場合、**両国政府が関与する公式ルート(日本側窓口はJICWELS)**でのマッチングが必要で、応募~面接~内定~入国まで国主導のスケジュールに沿って進みます。また6か月以上の研修期間を経てから配属となるため、採用決定から現場配置まで約1年要する点は他制度より長期です。そのぶん、来日時には一定レベルの語学・技能を備えている利点があります。
  • 在留期間と定着性:技能実習生は1号~3号まで段階的に最長5年間就労できますが、原則として期間満了後は帰国が前提です(※優良認定で特定技能等への移行は可能)。特定技能1号(介護)は通算5年まで更新可能ですが、現時点で介護分野に2号(無期限・家族帯同可)は用意されていません(※介護福祉士資格を取得すれば在留資格「介護」に移行し長期滞在が可能)。EPA候補者は最長4年の特定活動期間内に資格取得を目指し、合格後は在留資格「介護」へ変更して期間の制限なく働き続けられます。つまりEPAは資格取得さえできれば継続雇用が前提であり、将来的な定住や家族帯同も可能になります。技能実習・特定技能は制度上どうしても在留に上限があるため、長期的な人材定着という点ではEPAが有利と言えます。
  • 人材の条件・水準:応募者の要件にも違いがあります。EPA候補者は前述のように学歴や職歴など厳しい基準を満たしたエリート人材です。フィリピンでは国家資格保持者、インドネシアでも看護師等の有資格者が中心で、最低限の日本語力(N4相当)も証明して参加しています。一方、技能実習の場合は送り出し機関の基準によりますが学歴要件は特になく、高校卒業程度から応募可能です。特定技能も試験合格さえすれば学歴や職歴は問われません。また日本語も特定技能はN4程度が目安(日本語試験合格が必要)で、技能実習は入国時に日常会話レベルあれば良い程度です。総じてEPA人材は事前に高い専門知識と一定の日本語力を持っているのに対し、技能実習生や特定技能人材はポテンシャル採用の面が強く、受入れ後に現場で一から育成する負担が大きくなりがちです。
  • 資格取得の位置づけ:EPAは国家資格の取得が制度のゴールであり必須ですが、技能実習生や特定技能1号の外国人には資格取得義務はありません(そもそも無資格でも従事可能な業務に就きます)。EPA候補者は就労と並行して試験勉強に取り組みますが、技能実習生などは日々の業務習得が中心で体系的な試験勉強の機会は限定的です。そのため知識面の深さにも差が生じます。また転職の可否にも違いがあります。技能実習は原則として受入れ事業所以外で働くことが認められておらず配置転換は困難です。EPA候補者も協定上受入れ施設を原則変更できないため4年間同じ職場で働きます。一方、特定技能は雇用先の変更が比較的自由で、同業種内であれば転職可能です。この違いは、受入側にとってはEPA候補者の方が計画的に育成し戦力化しやすい反面、特定技能は不満があれば他社に移られてしまうリスクもあるということです。

以上をまとめると、**EPAは「限定された国の優秀層を政府間合意で招き、資格取得まで長期育成する制度」**であり、技能実習や特定技能は「より広い国から人材を募り、比較的短期間・即戦力として働いてもらう制度」と言えます。目的や位置づけが異なるため一概に優劣はつけられませんが、介護事業者が負担をかけずに質の高い人材を安定的に確保したい場合、EPA人材は非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

介護事業者にとってのEPA人材活用メリット

EPA介護人材を受け入れることは、介護事業者に多くのメリットをもたらします。ここでは即戦力性継続雇用のしやすさ費用対効果の観点から、その利点を整理します。

  • 高い即戦力性: EPA候補者は来日時点で十分な研修を積んでおり、日本語で基本的なコミュニケーションが可能なうえ介護知識の下地もあります。配属後の業務習得も早く、利用者との対話やケア記録も概ねこなせるため、戦力化までの時間が短くて済みます。現場からは「真面目で熱心」「専門職としての意識が高い」といった評価も多く、他の外国人材と比べ早期に職場になじむ傾向があります。指導担当の負担も比較的軽減されるでしょう。
  • 継続雇用・定着への期待: EPA候補者は国家資格取得後の長期就労を強く志向しています。資格を取れば在留資格が「介護」に変わり家族帯同も可能になるため、日本でキャリアを積み生活基盤を築こうという意欲が高いのです。実際に厚労省も資格取得後の日本定着を期待しています。またEPA制度上、候補者は4年間は同じ施設で働き続ける前提のため途中離職が起こりにくく、計画的な人材育成が可能です。技能実習のように契約満了ですぐ帰国されたり、特定技能のように他施設へ転職されるリスクが低い点は、事業所にとって大きな安心材料です。合格後は正社員として継続雇用でき、将来的にはリーダーやケアマネジャーへとキャリアアップしてもらうことも期待できます(実際にEPA第1陣のインドネシア人が日本で介護支援専門員資格を取得し管理職に登用された例もあります)。
  • 費用対効果の高さ: 外国人材の受入れには募集・教育コストがつきものですが、EPAの場合、その多くを政府間プログラムがカバーします。来日前の日本語研修費用は相手国政府やJICA等の支援により賄われ、受入施設には日本語教育や試験対策への補助金制度も用意されています。例えば、新人EPA候補者を受け入れる施設には初年度の指導に対する補助や、教材費支給など各種支援策が充実しています。さらに、資格取得に成功すれば長期雇用が可能となり、人材の入れ替わりによる採用コストを削減できます。5年ごとに技能実習生を一から育て直したり、常に人手不足で高い求人費用をかけるよりも、EPA人材を戦力化して定着してもらう方が結果的にコストパフォーマンスに優れるケースも多いです。またEPA候補者は雇用契約上日本人と同等給与とはいえ、業界水準で見れば新人介護職相当であり、人件費が特別高騰するわけではありません(資格取得後も処遇改善加算等で賄える範囲がほとんどです)。総合的に見て、EPA人材の受入れは費用対効果が高い投資といえるでしょう。

以上のように、EPA介護人材は質の高い即戦力を安定的に確保できる点で介護事業者にとって魅力的です。もちろん受入れにあたっては、日本での生活支援や試験勉強のフォローなど施設側の協力も欠かせません。しかしそれを差し引いても十分なリターンが期待できるため、「人が集まらない」「定着しない」といった悩みを抱える事業者ほど、EPA制度の活用を検討する価値があるでしょう。

弊社が提供するEPAネットワークと採用支援の強み

当社では、このEPA介護人材制度を最大限に活用すべく、独自のグローバルネットワークと支援体制を整えています。特に以下の点で、他にはない強みを発揮します。

  • 国費エリート層との直接的なつながり: 当社はインドネシア・フィリピン・ベトナムの送り出し機関や養成校と長年にわたり連携し、各国政府の奨学金プログラム出身者など優秀な人材プールにアクセスできるルートを持っています。つまり、EPA候補者の中でも特に語学・専門知識に優れたエリート層をいち早くご紹介することが可能です。実際にEPA候補者となる人材は各国で厳選されていますが、当社ネットワークではその中でもトップクラスの人材と繋がりがあり、質の高さに自信があります。
  • 既存ネットワークの規模と実績: 当社はEPA受入れ開始当初からこの分野に注力しており、多数のEPA候補者と受入れ施設をマッチングしてきた実績があります。現在までに数百名規模の候補者支援を行っており、各国に現地スタッフや提携パートナーを配置して円滑なコミュニケーションを図っています。こうした広範なネットワークにより、毎年安定して複数の候補者をご紹介できる体制を整えています。また合格者の同窓ネットワークとも連絡を密に取り、後輩候補者の相談役になってもらうなど横の繋がりも活用しています。ネットワークの広さときめ細かな情報収集力こそ、当社の強みです。
  • 充実した採用支援・定着サポート体制: 当社は単に人材を紹介するだけでなく、採用から定着まで一貫したサポートを提供します。具体的には、書類準備やJICWELSへの手続き支援、現地でのオンライン面接調整、日本入国時のオリエンテーション実施、そして配属後のフォローアップまでカバーしています。特に日本語学習や国家試験対策については、当社独自の教材提供やオンライン日本語教師の派遣などで候補者と受入れ施設双方をバックアップし、合格率向上と離職防止に努めています。文化習慣の違いによるミスマッチを減らすため、宗教上の配慮(礼拝時間の確保等)や生活指導についても専門スタッフがアドバイスいたします。これらの支援により、受入れ施設のご担当者様の負担を軽減しつつ、候補者が安心して実力を発揮できる環境作りをお手伝いします。
  • EPA制度に精通したコンサルティング: 当社スタッフはEPA制度や入管手続きに関する最新情報を常にアップデートしており、煩雑な申請業務もスムーズに代行します。「EPAと特定技能どちらを選ぶべきか」「受入れ準備として何をすればよいか」などのご相談にも、経験豊富な専門チームが具体的なアドバイスを差し上げます。政府の動向や制度改正にもアンテナを張っていますので、安心してお任せください。

介護現場の人材不足が深刻化する中、EPA介護人材の活用は質・量ともに有望な選択肢です。当社の強みであるネットワークと支援体制を活かせば、国際的にも評価の高い優秀な人材を迎え入れ、しかも長く戦力として定着してもらうことが可能になります。経済連携協定という国家間の信頼に支えられた仕組みを上手に使い、人材戦略の一環としてEPA候補者の採用をぜひご検討ください。当社も全力でその成功をサポートいたします。 

参考文献・出典

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