「69万人」——この数字を聞いたことがあるでしょうか。厚生労働省が2023年に発表した推計によれば、2040年における介護人材の需要は約272万人であるのに対し、供給は約203万人にとどまり、約69万人が不足するとされています。現在の日本の介護従事者が全体で約215万人であることを考えると、これはほぼ「今いる介護士の3人に1人が追加で必要になる」という規模の不足です。
【なぜ2040年が特別なのか:団塊の世代と後期高齢者の爆発】
2025年、いわゆる「団塊の世代」(1947〜1949年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者となりました。日本の人口史上最大のボリュームゾーンが、最も介護を必要とする年代に一斉に突入したことを意味します。厚生労働省の推計では、2040年には65歳以上人口が約3,900万人に達し、そのうち認知症患者は約584万人(現在比約1.4倍)になると見込まれています。要介護・要支援認定者数もほぼ同水準で増加する見通しです。
一方、介護を「担う側」の15〜64歳人口は逆に急減します。2020年に約7,400万人いた生産年齢人口は、2040年には約6,000万人台に落ち込むとされています。需要と供給が真逆の方向に動くことで、構造的な人材不足は避けられない。これが2040年問題の本質です。
【地域差という見えにくいリスク:都市部より深刻な地方の現実】
全国平均で「69万人不足」と言っても、その深刻さは地域によって大きく異なります。東京・大阪・名古屋といった大都市圏は人口流入があるため、相対的に人材確保の余地があります。しかし、神奈川・埼玉・千葉などの首都圏近郊や地方中核都市では、高齢化率の急上昇と若者の都市集中が同時進行しており、「人がいない・来ない・定着しない」という三重苦が現実です。
Mediflowが拠点を置く神奈川県相模原市周辺でも、訪問介護員の慢性不足は施設経営者の共通認識になっています。ある特養では「求人を出しても応募ゼロが当たり前。外国人スタッフがいなければシフトが組めない」という声すら聞かれます。
【「給与を上げれば来る」という幻想】
人材不足の解決策として「給与引き上げ」を真っ先に思い浮かべる施設が多いですが、これは必要条件であっても十分条件ではありません。介護業界全体の平均給与は過去10年で着実に上昇しています(2013年比で月額約5万円増:厚生労働省賃金構造基本統計調査)。にもかかわらず、有効求人倍率は一貫して高止まりし、他の産業との賃金差も依然として縮まっていません。
理由は単純で、介護を選ぶ日本人の絶対数が増えないからです。少子化による若年労働者の減少は、「給与」という変数で操作できる範囲を超えています。2040年に向けて人材確保の方程式を成立させるためには、国内だけに目を向けていては詰みます。
【外国人介護士は「補完」ではなく「主力」になる時代へ】
現在、介護施設で働く外国人スタッフは全国で約5万人強(在留資格別の推計を合算)とされています。介護従事者全体の約2.3%に過ぎません。しかし、政府の目標値と現場ニーズを照らし合わせると、2040年には外国人介護士が20〜30万人規模で必要になるという試算が複数の研究機関から示されています。つまり「外国人採用はやれる施設だけがやるもの」という時代は終わりに近づいており、「外国人スタッフを戦力化できるかどうかが施設存続の分岐点」になる時代が来ています。
早く始めた施設は、採用ルートの開拓・受け入れノウハウの蓄積・地域での評判形成において大きなアドバンテージを持ちます。「うちはまだ大丈夫」という感覚が最も危険です。2040年はあと14年後——今入職した外国人介護士が、その年にはベテランスタッフとして現場を支えている計算になります。動き出すなら、今です。